アモール・ポレンタ
トウモロコシ
上のお菓子4品の共通点は、何でしょうか?
一番右の 森永製菓の スピン、子供のころ大好きでした。今は亡き父と散歩に出かけ、そのついでに商店街で買ってもらったものです。 スピン(100円?)のほかに、ハマグリのバター焼き(確か50円?)の屋台がときどき来ていて、これもまた美味しかった!父との散歩は、この2つが楽しみでした。
明治のカール、これも好きでした。できたてを食べたことのある人は少ないかもしれません。あたたかくて、コーンの香りも強くて大変おいしいんです。
すみません、思い出話が長くなりました。
実は、すべて「コーングリッツ」を主原料としたお菓子です。
コーングリッツというのは、トウモロコシから皮などを取り除いてから粗く砕いたものです。
お菓子の世界にもしっかりと根を下ろしているトウモロコシ。もともとはどこでつくられていたのでしょうか?
トウモロコシの原産地は中央アメリカのようです。そういえば、コロナ禍で手に取った本に以下の記述がありました。
今見つかっている中で最古の原種は、実のなる穂先の部分がたった半インチしかなかったが、メキシコ先住民は西暦1500年ころに穂先が6インチ(15センチ)のものをすでに育てていた
(ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰訳「銃・病原菌・鉄」草思社文庫 p211)
大変な改良を経て、現代でも多くの人の食を支えているのですね。
また、トウモロコシ以外にも大航海時代に中央アメリカからヨーロッパにもたらされた作物は多く、ジャガイモ、トマト、カボチャなどがあります。
トマトはイタリア料理と切っても切れない仲にありそうで、実は最近なんですよね、イタリア料理に登場したのは。
そうそう、2016年のイタリア アマトリーチェ での大地震の後、サイゼリヤがチャリティーをやったことありました。399円の売り上げのうち、100円を寄付するという。
あのとき、アマトリチャーナを2品販売していました。ひとつはトマト味のロッソ、一つは、ペコリーノたっぷりのビアンコ。ガンチャーレを空輸して399円のスパゲッティに使うわけにはいかないですから、そこはパンチェッタで。
後者は、トマトがまだない昔ながらのアマトリチャーナをできうる限り再現したものだったのです。
トマトがいつ入ってきて、どのようにヨーロッパで広まったか。ご興味のある方はどうぞ、上の本をご覧ください。
さて、閑話休題。トウモロコシの話に戻します。
イタリアでは、北部のほう、アルプスを源流とするポー川流域に広がる広大な平原(パダーノ平原)にて、トウモロコシは多く育てられています。
このポー川、利根川とくらべると長さ2倍、流域面積(地上に降った雨水がその川に集まる土地面積の合計)4.4倍にもおよびます。
データはWIkiから収集
主にその川によって形作られる平野部の面積もそれにつれて広くなります。さらに、国土は日本の8割くらいなので、国土面積に対するこの平野の広さは大変なものです。
また、そこに形作られた都市には、ミラノやベネチア、パルマなどを含みます。
わが国における関東平野の重要性をはるかにしのぐものでしょう。
※借り物の画像です
このように農畜産、工業、商業が古くからおこなわれてきた土地です。
そんなところで培われた製粉技術によってつくられたのが、ポレンタ。トウモロコシの穀粒です。
これを使ってお菓子を作ることとしました。
「ポレンタ」といわれると、なにやら掴みどころのない、正体不明のものに聞こえますが、「コーングリッツ」といわれれば、「な~んだ、カールの原料か。おいしそ。」となります(私だけ?)。
目標品質は、これ!
ラトリエ・モトゾーのアモール・ポレンタです。
目標品質
ラトリエ・モトゾーについて少し。
池尻大橋駅そば5分くらいでしょうか。目黒川沿いにあるお店です。
どんなお菓子をつくろうか、そんなゼータクな悩みを抱えた時、ちょくちょくお邪魔していました。
下に掲げた藤田統三シェフご執筆の本は、何を隠そう私のバイブルです。
巻末には藤田シェフがお使いになってらっしゃる菓子原料の一覧があります(サプライヤーさんの名称、原料の商品名、使用先メニューなどなど。これは大変ありがたいです。)
今回のレシピは、上記の本をかなり参考にして作りました。
で、今回のレシピ
ポレンタケーキ
【レシピ】
A バター 100g
A 砂糖 100g
A 塩 1つまみ
B 全卵 1つ
B 卵黄 3つ分
C ポレンタ 80g
D 薄力粉 60g
E 白ワイン 20g
① A のバターと砂糖、塩を合わせて白くなるまでしっかり泡立てる。
② ①に B の卵を少量ずつ入れて混ぜる。8割程度までいれる。
③ C のポレンタを加える。やや分離気味でも気にしない。
④ 残りの卵を加える。
⑤ D の小麦粉を入れ、粉けがなくくらいまで混ぜる。
⑥ E ワインを入れて軽く混ぜる。
⑦ 型に流し込み、180℃40分。粗熱をとって方からはずす。
リコッタチーズ、マーマレードと合わせて食べました。
プチプチの食感が楽しい。
下はカシスのジュースを砂糖と一緒に煮詰めたもの。ルバーブ探しながら、結局カシス。
甘さもやや抑え気味で、コーンの香りが優しい。
コツ
①レシピにも書きましたが、分離気味になっても気にせず、一気にポレンタを入れてしまいましょう。ポレンタがある程度水分を吸ってくれますから、分離がやや収まります。
②小麦粉は、今回は冷蔵庫を開けたら薄力粉が目に入ったので薄力粉を使いました。00粉がおすすめのようですが、中力粉でよいでしょう。やや頼りない食感になったのは、このせいかな。
③ラム酒を使うレシピもいくつか見かけました。ラトリエモトゾーではストレーガ(サフランをつかったリキュール)を入れていますが、そんなマイナーなお酒を買うつもりはありません。万人受けしやすい軽い味にするには白ワインがちょうどいいでしょう。
白ワインの軽い香りがほんのりとつくので、バニラは不要です。
使った材料はこれ。
石臼で引いているので、香りがしっかり残っています。
そば粉、抹茶、バジルなど、生の香りをしっかりと残したいものは石臼でゆっくりと熱を持たないようにして砕くのが大事かと。
この前は、ムリーノ・マリーノ のを使いましたが、香り立ちの点で差があるとは思えませんでした。ご興味のある方は、比較してみてはいかがでしょうか。
以上、ポレンタでした。